会長挨拶

第36回日本脊髄外科学会の演題募集にあたってのご挨拶

会長 社会医療法人信愛会交野病院 信愛会脊椎脊髄センター

寳子丸 稔

脊椎脊髄疾患は非常に多い病気で、高齢化社会になるに従い徐々に増加傾向にあります。たとえば、有訴者率の1位と2位は腰痛と肩こりで、症状としては最も多いものです。また、剖検による検討では80歳を超えると37%の人に脊髄圧迫が認められたと報告されています。DALY (disability-adjusted life year)とは病的状態、障害、早死により失われた年数を意味する疾病負荷を総合的に示す指標でありますが、世界全体でみると腰痛と頚部痛が1990年には5位であったものが2016年には3位に上昇しています。また、先進国に限ると1990年から不動の2位を占めています。これらのことから、脊椎脊髄疾患が引き起こす症状は増加傾向にあるばかりでなく社会への大きな負担になっていることがわかります。脊椎脊髄疾患は、症状が軽いうちは保存療法が有効ですが、重篤化すると手術が最も有効な治療法です。実際、脊椎脊髄疾患の手術数は非常に多く、平成30年のDPCデータからの推計によりますと全国で約12万件が行われており、これは脳神経外科手術全体に匹敵する手術数と言えますが、JNDのデータと比較すると脳神経外科はわずか15%程度しか関与できていません。しかしながら、脳神経外科医は緻密な手術を旨とし、神経組織への愛護的な操作に長けているという誇るべき長所があり、脳神経外科医による脊椎脊髄外科手術へのさらなる関与が求められています。そのために脳神経外科の中での脊椎脊髄外科医の育成は喫緊の課題であると言えます。そこで、第36回日本脊髄外科学会の主題を「脊髄外科医を育てる」とさせていただきました。そのために、本会では特に、1)育てる立場からどのように脊髄外科医を育成していくかを議論できる場、2)若い会員が手術手技を学べる場、3)個々の症例の治療方針などを議論する場、4)研究のやり方、論文の書き方などを学べる場を設けたいと考えております。また、学術的な話題に関しては、演題募集の際に特に主題を設けず、皆様の応募状況に応じて興味深いセッションを提供していきたいと考えております。是非、皆様の積極的なご応募をお願い申し上げます。

ところで新型コロナウイルスは発生以来衰えを見せておらず、2021年6月の感染状況を予測することが困難ですが、本年と同じような季節パターンをとると仮定すると、学会開催時期の感染状況は比較的落ち着いたものになるが未だ終息していないと予測するのが妥当と思われます。学会はやはり会員の皆様がお集まりになって議論することに意義があると思われますが、病院や地域の事情により現地に出席できない会員の方もおられると予測されますので、現地参加に若干ウエートを置きながらオンラインでも参加可能な方式で開催する方向で準備をすすめてまいりたいと考えております。

6月初旬の京都は気候も良く新緑が鮮やかで非常に美しい時期です。会場の国立京都国際会館に隣接する宝ヶ池は緑豊かな遊歩道を1周でき、小生が学生時代に毎日ジョギングしていた場所です。皆様と是非、6月初旬の京都でお会いできますことを心から楽しみにしております。

令和2年12月

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