会長挨拶
会長 山田 純生
名古屋大学大学院医学系研究科(総合保健学)教授
“循環器病予防”には、循環器病の発症予防や発症後の重症化予防が含まれますので、その実践の場は地域や健保組合における保健指導に加え、医療機関における重症化予防(心臓リハビリテーション医療)まで多岐に渡ります。これらはいずれも対象者におけるリスク因子の同定と是正を基本としていますが、最近では運動や栄養などの従来の因子に加え、騒音やストレスなどの非従来型のリスク因子がクローズアップされてきました。また、従来の冠危険因子の是正目標値もこの数年で著しく変化しています。中でも特筆すべきは、リスク因子を是正する方法論自体に大きな変革が押し寄せていることです。デジタル化の波です。デジタル化は本学会が対象とする慢性期のリスク因子是正においてもっとも効果を発揮するものと期待されており、新しい保健指導ならびに重症化予防医療の潮流となる可能性を秘めています。そこで、本学術集会は、「臨床疫学とデジタルヘルスの融合」をメインテーマとし、遺伝子を含む新しい循環器病リスク因子や、リスク因子是正をデジタルヘルスの枠組みで行うための諸要因について、産業界の皆様にもご参加頂き、シンポジウムやパネルディスカッションで最新の知見を情報発信することを企画いたしました。
学会への参加方法も、COVID-19のみでなくメインテーマにも合わせ、会場への直接参加に加えてオンライン参加を設けます。シンポジウムやパネルディスカッションは、ライブ配信に続いてオンデマンド配信を行います。中でも、全ての教育講演はサイバー空間に設けたWeb会場のみで行い、他会場で開催されるシンポジウムや演題発表を聞いた後からでも聴講できるよう企画しました。先生方には、時間的制約を気にせず、循環器病予防の最新の知見に接して頂ければと存じます。また、今回の学術集会では、特に教育講演を充実させて頂きました。その内容は、保健指導に必要な循環器病リスク因子の管理目標値の変遷や改善標的となるライフスタイルに加え、保健指導のコミュニケーション方法まで、実践的内容を幅広く設定させて頂きましたので、これから循環器病の保健指導・重症化予防医療に参画する方のみでなく、相応の経験を有している方にも保健指導や日常臨床のブラッシュアップにお役立て頂けると存じます。
その他、本学会がこれまで継続している“循環器病予防のエビデンス構築のための疫学研究力育成講座(予防セミナー)”や、日本高血圧学会・日本心臓病学会・日本動脈硬化学会と共同で育成する高血圧・循環器病予防療養指導士など、本学会が進めている循環器病予防に関する最新の活動も発信します。これらは、デジタルヘルスにおける介入の理解にも欠かせない知識・内容が含まれています。学会員の先生方のみならず、会員外の先生方にも積極的に聴講頂けますと幸いです。 循環器病予防ならびに重症化予防へのデジタルヘルスの導入は、まさにこれから黎明期を迎えます。多くの方々のご参加を心よりお待ちしています。