第38回日本性科学会学術集会を平成30年9月23日(日)に名古屋で開催します。平成最後の学会となると思われますので、平成30年の表現にこだわりました。時間の流れに線が引かれるわけではありませんが、自ずと「平成の時代」と括られるこの30年間に「性科学」はどのように発展したかを振りかえり、次の世代に何を伝えていくかを考えるという意味を込めて、学会テーマを「次世代につなぐ性科学」といたしました。

 私自身は産婦人科医として40年間を過ごしてきましたが、前半22年間は勤務医として大学病院で2年間、公立総合病院で20年間、産婦人科一般の臨床を行ってきました。主な学会活動は日本産科婦人科学会、日本新生児学会、日本感染症学会であり、大学では腫瘍免疫を、病院では新生児GBS感染症の予防をテーマに仕事をしてきました。18年前にビル開業して婦人科中心の外来診療のみを行うようになり、それまでに経験したことのない患者さんに出会うようになりました。最初の戸惑いがGIDの患者さんでした。文献頼りの手探りの診療の中で当時性科学会理事でいらっしゃった亀谷譲先生に出会って GID学会と性科学会を知り、入会して勉強させていただきました。私の性科学会活動歴は高々16年であり、その知識は発展途上です。ただ性科学会幹事をさせていただいたことで、私の世界が広がったことは確かです。私の専門である「産婦人科医療」はすべてが「性科学」と重なるのですが、「性科学としての視点や考え方」は必ずしも取り入れられてはおらず、「性器の疾患や生殖の機能」は研究されていますが「性行動を含む性の健康」の視点は欠けているように思います。

 「性科学」の学際性が前回(第37回)の学会(山中京子会長)のテーマでしたが、今回は「性科学」に関連する各分野の教育や臨床に「性科学」がどのように取り込まれているかをひとつのテーマとしてみました。平成29年10月~12月に全国の大学の医学部精神科82校、同産婦人科82校、看護系大学252校、日本臨床心理士資格認定協会指定大学院・専門職大学院168校を対象に「大学教育に『性科学』はどのように取り入れられているか」に関するアンケート調査を行いました。泌尿器科においてはすでに同様の調査が行われており、論文にまとめられていますので(順天堂大学医学部附属浦安病院泌尿器科 白井雅人先生)今回は対象としませんでしたが、白井先生からはこのアンケート調査に関する助言をいただきました。本調査の結果を基に学会ではシンポジウムを予定しています。

 臨床医としての興味からは、身体疾患や精神疾患の臨床の中での「性」の問題も考えてみたいと思います。また「性加害・性被害に対する医療・教育・福祉からのアプローチ」をテーマにしたシンポジウムを性科学会幹事の丹羽咲江先生を中心にして検討しています。

 今回学会の会場となる中日パレスは、名古屋の商業・文化の中心地である栄のランドマーク的建造物である中日ビルの5階にあります。中日ドラゴンズの本社のあるビルで、かつてドラゴンズが優勝した時はパレードと祝勝会で賑わいました。このビルも平成30年末に閉鎖して建て替えることになっています。各種の研修会・講演会や忘年会等で利用してきた施設であり、様々な思い出のある場所です。私のオフィスはこのビルの向かい側にありますのでより思い入れが強いかもしれませんが、最後にここで本学会を開催できることをうれしく思っています。

 他の学会がそうであるように、本学会でもご希望があれば託児所を開設します。

 例年通り、9月22日(土)午前にGID学会エキスパート研修会、午後に日本性科学連合性科学セミナー、夕方合同懇親会を開催します。

 初めての開催である名古屋の地で皆様にお会いできるのを楽しみにしています。

エスエル医療グループ すぎやまレディスクリニック院長
杉山 正子
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