2017年7月8日(土) 、東京慈恵会医科大学 大学1号館にて第7回低侵襲・内視鏡脊髄神経外科研究会を開催いたします。

会長挨拶

会長:谷 諭

東京慈恵会医科大学 脳神経外科学講座

このたび、第7回低侵襲・内視鏡脊髄神経外科研究会を担当することになりました慈恵医大脳神経外科の谷 諭です。前回会長であり、日本脊髄外科の中でも国際的な観点からも低侵襲手術のリーダーである水野順一先生からお話をいただいてからというもの、「低侵襲」ということを改めて考えさせていただきました。

従来、医療は適切な診断の後、患者さんへ医師が治療を施術するわけですが、その際には、医師の裁量に全て患者さんが委ねるようなpaternalism(日本語では父権主義と訳されることが多い)がまかり通っていたわけです。しかし、1970年代初頭からパターナリズムが社会的問題として喚起されるようになり、現在では「患者の利益か、患者の自己決定の自由か」をめぐる問題としてインフォームドコンセントを重視する環境が整いつつあります。

つまり、僕たちは、診断後の治療手段として、薬物療法とその他の一つとして手術療法を提案してきたわけですが、低侵襲技術・診療器機が発達する中で、手術療法の中でも、従来の手術と低侵襲手術と言われるものを選択肢として挙げなくてはならないわけです。ここで重要なことは、傷の大小ではなく、患者さんへの利益・不利益を正確に伝える必要があります。決して、医師がその時点で背景に持っている父権(たとえば自分は低侵襲手術をやりたい)を行使して、医師の都合の良い方向へ誘導することなく、正確な情報を患者さんに伝えねばならないと考えております。

換言しますと、僕たちには進歩する医療技術の中でも、各種手術の利点・欠点を正確に伝える「説明義務」があるわけです。そしてもちろん、手術を行う際には「注意義務」があるわけです。「重大な過失」とも背中合わせである医療事故の面からも我々に課せられた義務が多いことを、よーく考えていただくことが重要ではと、年老いた僕が皆さんに確認をお願いしたく、今回の研究会を催したく思っております。

そのような意味から今回の研究会の主題は「再考:低侵襲手術」とさせていただきましたが、決して、低侵襲を否定しているわけではなく、このような研究会を通して、患者さんの利益になるような適切な医療技術・器機の進歩を目指せればと思います。

本研究会では主題に関連して、頭部の内視鏡手術の第一人者でなおかつ医療安全管理でもオピニオンリーダーである東京医大脳神経外科三木 保先生に「内視鏡手術と医療訴訟」のお話をお願いしてあります。また、低侵襲手術の一翼を担う「コンピューター支援」も将来的に有望なカテゴリーと考えており、主題のひとつとさせていただきました。

今回は、会場も大学施設を使用し、規模もダウンサイジングさせていただきました。各種医療技術・診療器機メーカーとの産学共同での発展が望ましいわけですが、本研究会の目的とsustainabilityを考えますと、コアな部分を大切にしながら、本質のみ執り行うのが良いのではと思いました(ターゲットを絞る)。

そのように意図した本会でありますが、患者さんに適切で良質医療を提供するという我々の生き甲斐を少しずつでも前進できるように、今回の研究会を教室員一同準備しております。皆さんのご負担を少なく、しかし、仲良く多くの意見交換ができるような会にしたいと思いますので、多くの先生方のご出席をお待ちしております。

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