愛媛県医師会における地域医療情報化の進め方
谷水 正人1) 佐伯 光義2) 久野 梧郎2) 芳仲 秀造2) 窪田 理3) 木村 映善4) 立石 憲彦4) 石原 謙4)
独立行政法人国立病院機構四国がんセンター1)
愛媛県医師会2)
松山市医師会3)
愛媛大学医学部付属病院医療情報部4)
Strategy for developing wide area medical network in case of Ehime Medical Association
Masahito Tanimizu1) SMitsuyoshi Saeki2) Goro Hisano2) Syuzo Yoshinaka2) Osamu Kubota3) Eizen Kimura4) Norihiko Tateishi4) Ken Ishihara4)
NHO Shikoku Cancer Center Hospital1)
Ehime Medical Association2)
Matsuyama Medical Association3)
Medical Informatics Ehime University Hospital4)
Abstract: The strategy for developing wide area medical network was discussed in the case of Ehime Medical Association (EMA). Digital divide and high aged members over sixty cannot be ignored in the process of developing wide area medical network. We would ask all of the EMA members only to learn E-mail or the Internet surfing and use them.
Keywords: Medical Association, Wide Area Network, the Internet

1. 緒言
 愛媛県医師会では現在はブロードバンドとVPNを基盤に県下全域をおおう常時接続型ネットワークが構築されているが、ネットワークが医師会運営の中心的役割を担うことはできていない。電子メールやWebはすでに世の中の常識であるが地域医師会においては標準的情報伝達手段として認知されているとは言い難く、まだまだ地域医療情報化は遅れている。医師は生涯現役であり年齢構成からみるとデジタルディバイドに関して不利である。愛媛県医師会では今年度から医療情報部が新設されようやく情報化に本格的に取り組むこととなった。我々の活動を紹介し地域医師会を中心とする情報化の戦略を考察した。
2. 愛媛県医師会で構築しているネットワークシステム
 
2.1 1.愛媛県医師会のブロードバンドネットワーク基盤(EMAネット)
 愛媛県医師会は平成7年よりインターネット接続されている。現在は100Mbps(固定グローバルIP32個、実行速度80Mbps)で接続されており、インターネットVPN(ソフトウエアVPN(端末ソフトは無料)とハードウエアVPN (ルータ間VPN)が整備されすべての医療機関からイントラネットへの常時接続が可能である。また県が提供する愛媛情報スーパーハイウエイ(IP−VPN閉域専用線網)により県下の基幹病院は県医師会イントラネットに常時接続されている。  
2.2 2.EMAネットで稼動するサービス:
  
2.2.1 1)イントラホームページによる会員への情報提供とプロバイダサービス:
EMAネットワーク情報の掲載、医師会、医療関連の各種文書情報の掲載、郡市医師会へのサーバハウジングサービス(郡市医師会が発信するイントラネットホームページ、グループウエア、公開ページ、市民向けメール配信サービスなど)。   
  
2.2.2 2)Webmail紹介状:
診療情報提供書のネットワーク版、Web画面の空欄を埋めるだけで紹介状や返書が完成し、画像ファイルを添付できる。普段使うメールへも着信が通知され、相手の開封状況が送信者に表示される。イントラネットの通信であり経路は暗号化されている。   
  
2.2.3 3)P2P-Web連携病診連携支援システム:
医師や医療機関の対応医療内容の詳細情報データベースである。病診連携に必要な情報〔在宅医療(リハビリ、緩和医療)、難病疾患への対応〕を掲載している。登録はユーザーが行い管理者はインデックスサーバを管理する。   
 
2.3 3.システムの安全性と運用体制
EMAネットでは安全確保のためファイアーウオール、ウイルススキャンを備え、サーバはRAID構成としている。医療機関間の患者情報交換はすべてイントラネット内で行える。EMAネットは愛媛県医師会医療情報部が統括し、情報担当事務職員2名(併任)をおき、システム全体と個々のアプリケーションについて地元ベンダーと保守契約を結んでいる。  
 
2.4 4.ORCAプロジェクト推進の基盤となるEMAネットワーク
ORCAプロジェクト系用(日医標準レセプトソフトのバックアップ、保守用ネットワーク)はEMAネット内でEMAイントラ系と内部的に切り分けている。平成14年12月からはORCAプロジェクトコンソーシアムを立ち上げた。これはEMAネットとORCAプロジェクト系ネットワークを管理し、統一したセキュリティポリシーのもとに医療機関や関係ベンダー間の調整を図るためのものである。愛媛県医師会医療情報部、愛媛大学医学部医療情報部、ORCA協力業者(現在2企業)、愛媛県医師会ネットワーク保守管理業者により構成される。  
 
2.5 5.現在のネットワーク稼働状況
平成16年7月時点ではすべての郡市医師会と救急医療担当の基幹医療施設、診療所の120施設余りが常時接続され、ダイアルアップ利用を含めると約500施設がEMAネットを利用している(愛媛県下の医療機関数は1300施設)。また,平成16年7月現在,県下の28施設で日医標準レセプトソフトが本稼働している。  
3. 愛媛県医師会における情報化推進の計画と方向
本年度に愛媛県医師会医療情報部から提案され承認された活動方針は以下である。
1.電子メール、メーリングリストを駆使した議論の効率化、
2.ホームページを活用した情報の公開と共有、
3.医師会の事務局のネットワーク化と電子化データの蓄積、
4.テレビ会議システムを活用した運営会議の効率化、
5.ORCAプロジェクトを核にした会員情報化への支援、
6.ネットワーク講習等による郡市医師会、会員ネットワーク化支援 である。
 我々は日本医師会や厚生労働省からの保健医療情報の配信を積極的に行い、会員間の情報交換にネットワークを活用しやすいように環境を整え、会員が有用と考える情報の配信やデータベースを拡充することが重要であると考えている。すなわち従来の郵送やFAXによる情報伝達方法からネットワークへ切り替えの環境整備を進めることを第一の目標にしている。
次に各郡市医師会、会員の情報化を支援することが目標である。この点はORCAプロジェクトの推進を軸に進める。個々の医療機関の情報化においては費用負担も少なくなく会員に直接のメリットがあることが重要である。また会員のネットワーク利用や会員の所属する医療機関内部のネットワーク化は会員個々のスキルやそれぞれの環境により大きく左右されるため個々の医療機関の環境に合わせた個別の情報化や診療形態によるニーズの違いに応えられることも重要である。そのために医療情報部としては定期的なネットワーク講習会を開催し、メーリングリストによる会員間の情報交換の機会を増やし、ネットワーク支援企業とは頻繁に意見交換し、医師医療機関固有のニーズを明確に伝えていくことに努めている。
4. 考察
医療者間の情報流通に今後は徐々にインターネットが中心となると期待される。これまでに準備した愛媛県医師会のネットワーク基盤、医師医療機関情報検索システム、Webメール診療情報提供システム、P2Pグループウエア(による個別の患者情報共有)等が病診連携や患者サービスの向上に大きく貢献することになるであろう。年齢幅が大きく情報化への遅れの目立つ医療界においてはむしろ身近に今ある常識的なインターネットの利用と普及こそ重要であると認識している。我々は一貫して地域共有型電子カルテなどのプロジェクトには距離をおいた立場をとってきている。医師会ネットワークとして独自にひとつの統合システムを開発構築することにはまだまだ無理がある。個々の医療機関の情報化は個々の責任であるが最近は画像や検査のデータ整理に有用で日医標準レセプトとも相性のよい安価なソフトが出始めており期待される。